トラウマ体験を持っていると、日常の中で自分のトラウマ体験に触れることがある。
たとえば
- テレビのニュースなどの報道で流れる性被害や虐待の話題
- トラウマに関連する人物、または似ている人物との遭遇
- トラウマ体験に似た体験の遭遇
以上のような日常にありふれた体験が、過去のトラウマを刺激する。
トラウマに触れたときの変化
たとえば、わたしには母親から精神的虐待を受けていた経験があり、近くで親子に遭遇したとする。
その母親がいきなり子どもを叱り出した時に、動悸が始まる。
または、性被害経験者のわたしが性被害の報道を見たとしよう。
その場合、過去の自分の性被害体験のフラッシュバックが起こる。
それだけで済む場合ならまだマシなほうで、場合によっては他の解離性障害や転換性障害、PTSDの症状が出ることがある。
- 人格が切り替わり、意識が消失する
- 頭の中で人格たちが恐怖や怒りを話し出す
- 四肢麻痺や運動障害の症状が出て倒れる
- フリーズして固まり動けなくなる
などの症状が出ることが多い。
特に意識や身体に症状が出てしまう場合、やっていたことを強制的にシャットアウトされる。
日常生活に支障をきたすのである。
日常の中でふとした折に、トラウマ体験に触れてしまうと自分ではどうしようもなくなってしまう。
トラウマ体験への対処法
一番はトラウマが処理されてトラウマではなくなることが望ましい。
そうすればトラウマへの反応がなくなる。
しかし、それには難しさがある。
処理するまでに年単位の治療が必要で、場合によってはトラウマの専門的な治療で高い治療費を捻出しなければならない。
実際には、トラウマ治療をするセラピストを見つけるにも苦労し、トラウマに精通している精神科医に出会うことも難しい。
トラウマを処理するには労力と時間とお金と専門家との出会いが必要となる。
一朝一夕には終わらない。
一番対処法として多いのが、回避することである。
トラウマ体験に触れることがないように、日常的にイヤフォンや耳栓をしたりテレビの情報から遠ざかることで、トラウマに触れる機会を回避する。
しかし、回避していては何も解決しない。
そのために、あえて安全にトラウマ体験に触れ、トラウマ体験に触れても大丈夫であると認識させることで記憶の上書きをしていくことも重要な治療法となる。
これを曝露療法という。
たとえば、東日本大震災で津波の被害にあった場合にも、トラウマ化してしまう人もいる。
そのような人には安全なところで水に触れさせていく。
その恐怖心を水に触れさせていくことで触れても大丈夫であると学習させてる。
そうして恐怖心を下げてトラウマであった水をトラウマではなくしていく治療法だ。
この曝露療法を繰り返して、トラウマ体験に触れても大丈夫であると再学習させることでトラウマがトラウマでなくなることがある。
恐怖心と対峙するため、労力は果てしない。
曝露を繰り返すこともストレスフルである。
トラウマは一度、トラウマ化してしまうと日常生活を送ることも困難である。
そして、今もなおトラウマ体験というものは生まれている。
戦争や災害、犯罪被害、虐待や性被害の報道は絶え間なく流れ続け、心を痛めている人たちがいる。
そんなトラウマを抱えた人がこの世の中に存在していること、戦いながら日常生活を送っていることを知っていただけたら嬉しい。